第6回 コンソメスープの巻き
もう、十年以上前になるがお客様に勧められてアム○の鍋(10点セット位)を14,5万近くで購入した。
集会にもよくつれて行かれたが、そういうのメンドクサイのでやめた。
少し高いけど、りっぱな鍋だ。
「これなら50年はもつので花嫁道具に」 私は男だ。
「それなら、花婿道具に」 私は長男だ。
今の状態だったら弟二人はとっくに結婚し子供もいたりするから、私が養子でも両親は喜ぶだろう。
それはさておき.......。
独身のキッチンには不似合いな高性能な鍋セット。
でもうれしくなって料理しようと思いどうせやるなら真剣にと、「本格フランス料理」なんて本買って始めちゃいました。
まずは基本のスープストックをと思い、食材は広尾の明治屋で調達して、ひき肉は松坂牛の100g1500円ぐらいするやつなど、牛骨、すね肉、牛肩肉、たまねぎ、にんじん、セロリ、りんご、にんにく、卵白、タイム、セイジ、ロリエ、パセリの茎などなど。
お酒なんてシェリー酒、マデラ酒などわけ分からないものをいれて。
アクなんて何百回も捨て、そして漉し、大きい鍋をだんだん小さい鍋に移し変え、3、4日かけ最後は小さな煮こごりになった。
食材は1万円以上かかっているが、だしをとった食材は全部捨て最後に残ったのは小さなゼラチン状のもの、それをお湯で戻し塩コショウで味を調え、コンソメスープにしてみた。
うまいっ 何かホッとする
こんな原価率の高いスープはない。
最初からマギーブイヨンにしていれば2、30円ですんだだろう。
有楽町の「アピシウス」や広尾の「ひらまつ」でさえありえない。
料理と美容はよく似ている。
コックと美容師も共通点が非常にある。
誰も何処の調理学校出身だとか、学歴とか免許持っているかで料理を食べに来るのではない。
「うまいか、まずいか」この点で多くは決めている。
美容室も然り(私はちゃんと免許、持っています)。
「ウマイ=ヘアースタイルがキマッテいるか」ということで来店しているはずです。
だけど全国の美容室が(ここで大勢の美容室を敵に回す)今までにこの「ウマイ」をどれだけ追求しようと考えたことがあるでしょうか?
ほとんどないと思います。
かつてその気持ちがあった人は多数いるとおもいますが。
「癒し」でオブラートに包み込むのはやめましょう。
はたして美容室は癒しの場なんでしょうか?
たしかにシャンプーやマッサージなど気持ちいい時もありますが、多くのお客様は歯医者さんほどではないにしても、はやく家に帰りたいはずです。
頭中、ロッドやタオル、変な液体つけられて、お店の中を猿回しのようにグルグル。
美容師のつまらない会話(この点に関してわたしは本来だまって仕事をしたいんだけど、手を止めて時にはツバ飛ばして喋りまくる時がある。
(スミマセン)にうなづかなくちゃならない。
早く、家に帰らせて......。
どんなにお店の雰囲気が、スタッフの笑顔が素敵でも最後にヘアースタイルがきまらなっかたら、多くのお客さまは癒されません。
お店側としては会計をすれば、スタイルが決まったかどうかなんて、直に忘れます。
でもお客様にはそれから、2、3ヶ月は最低でも不幸は続きます。
「カワイイ マッシュウルフにして下さい」って言ったのにこれじゃ布川かツブヤキだぁ〜!
ずっと癒されません。
えらそうに お客に最高のスタイルを提供し、癒すことができたか?
全然、できていません。
100%できていたら今頃は何十万人の顧客をかかえ、カット時間は1分以内、客を「コナス、マワス」を考えているでしょう。
いまだに未熟者。
私の仕事はほとんど世の中の重点項目からいえば、ほとんど役にたたない、血にも肉にもならない栄養のない「コンソメスープ」だ。
でも、ここへ来たなら「ウマイ、ホッとする」そんなスープを出したい。
今、うちのコンソメスープ濁っております。
「どうせ客なんてほとんど味なんてわからないんだから、化学調味料いっぱい入れ、和牛だろうが輸入牛だろうが役人は目をつぶるだろうから偽装してしまえ」
−完−